宝蔵に収蔵されている寺宝を公開致します。
禅文化・仏教美術に触れ、嶽林寺の歴史の一端を感じていただければ幸いです。
(1)「正法眼蔵嗣書巻」
「正法眼蔵」は、曹洞宗を開かれた道元禅師のご撰述で宗旨参究の最大根本聖典である。
本書は、天文3年(1534)6月27日天桂宗長により大雄山最乗寺にて書出された「正法眼蔵」の嗣書巻であり當山典籍中最古のものである。
「大雄山誌」によれば、天文2年(1533)雙林寺5世天如禅相晋住の記録があるが実際には天如禅相は永正13年(1516)遷化、雙林寺6世節田正忠も享禄2年(1529)遷化しているので雙林寺7世・当寺開山の在天宗奝禅師が晋山したものと思われる。(當山の記録では天文元年、在天禅師大雄山最乗寺にて輪番住職を勤めるとある)
「曹洞宗大系譜」によれば、在天禅師の法嗣として雙林寺8世大興玄隆と嶽林寺2世天慶宗積がいる。残念ながら、本書を書写した天桂宗長については記録がなく行履は不明であるが在天禅師に近い方であったと思われる。推測であるが、天桂宗長は在天禅師の弟子であり師の最乗寺晋住にともない随行、当寺最乗寺室中に秘蔵されていた正法眼蔵を書写し、師である在天禅師が署名花押したものであろう。巻中に大興玄隆の署名花押と判があり、巻頭には雙林寺15世愚明正察による極めが有る。
いかに本書が重要視され大切に伝えられたかが窺われる。約500年の歳月と、数度の火災にもかかわらず伝承された「正法眼蔵」の中世の貴重な古写本であり開山在天禅師唯一の署名花押がある當山第一等の寺宝であるといえよう。